虎之助の徒然記

とらちゃんの自己紹介

 ブログ名は、母の飼い猫の"とらちゃん"こと虎之助から名前を貰いました。とらちゃんのように気ままにやっていきたいと思います。まずは、とらちゃんの自己紹介(漱石ふうに...⁈)




 吾輩は猫である。名前はまだない、かも。

 吾輩は、乳離れもせぬ頃に弟と一緒に、隣の牧場から今の家に連れてこられた。後になって知ったのであるが、主人は前に飼っていた猫が死んでしまって、たいそう寂しい思いをしていたそうである。一人暮らしの主人にとっては、大切な同居人だったのだろう。主人の子からは、新しい子猫をもらってこようかと言われていたが、『また死んだら嫌だから』と頑なに断っていた。前の猫を失って寂しがっていることを知った牧場の嫁が、『子猫が生まれたから』と言って、私と弟を無理やり連れてきたのである。弟は直ぐに亡くなってしまったのだが、吾輩は主人に可愛がられて、なに不自由なく暮らしている。この家に来てから、そろそろ1年となる。

 さて、吾輩の名前であるが、主人は、御飯時になると、『とらちゃーん、ごはんだよー』と呼ぶ。この声を聞くと、ご飯にありつけるので、外で遊んでいても直ぐに主人のもとに行くのだが、いつも同じフレーズなので、吾輩の名前が『とらちゃん』なのか、『ごはんだよー』なのか、『とらちゃーん、ごはんだよー』なのか、見当が付かなかったのである。主人の子は、この家に居座っている先輩猫を『ごはんちゃん』と呼んでいるので、どうも吾輩の名前は、『ごはんだよー』ではなく、『とらちゃーん』のようである。よくよく思い出すと、御飯時以外にも『とらちゃーん』と主人に呼びかけられるのに加えて、吾輩は茶虎なので、『虎ちゃん』と呼ばれているのかもしれぬ。これが吾輩の名前だとしたら、余りにも安直である。

 主人の子は、吾輩のことを『レッドタビーボブテイルの虎之助』とカタカナを使って人に紹介することがある。然るに吾輩の名前は『虎之助』で、『虎ちゃん』が愛称なのであろう。

 ところで、先祖代々この地に住んでいる吾輩を『レッドタビーボブテイルの虎之助』と子はいうが、『尻尾の短い茶虎猫の虎之助』と言っているだけである。イランの長毛猫、泰国や亜米利加の短毛猫もカタカナで呼ぶと皆に大切にされるようであるが、カタカナで呼ばれない近所の猫はご飯にありつくのもやっとなのに、理不尽である。カタカナ猫と吾輩らのどこが違うのかよく分からない。我々の仲間も外国で暮らせば、日本にいるカタカナ猫と同じように大切にあつかわれているというのにである。幸いなことには吾輩は可愛がられて大切にされているので、主人には大いに感謝している。

 そんな吾輩の仕事は、主人を喜ばせることである。

 朝一番の仕事は朝食である。朝、台所にいる主人の足元にいくと、主人は吾輩のご飯皿の前に行ってキャットフードをくれるのであるが、これが意地が悪い。なかなかご飯を出してくれないのである。吾輩が空腹であることが判っているにもかかわらず、『とらちゃーん、なーに?』と言ってご飯を出してくれない。キャットフードが入っている瓶に頭をスリスリすると、主人は嬉しそうにご飯を出してくれるのである。これが食事の度にである。頭スリスリは好きではないが、感謝している主人への奉仕なので致し方ない。

 吾輩は主人の食事にも付き合っている。主人が食卓に座って食事を始めると、横の椅子に座る。いい匂いがする時には、鼻をクンクンさせて、手を伸ばすこともあるが、主人は喜んでひとつまみ分けてくれる。この仕事は好きである。主人の子がいる時には、子の膝の上に乗ってみるのだが、鼻をクンクンさせてもビールやらワサビやら吾輩の嫌いなものばかり顔に持ってきて、サンマやシャケといった好物の皿は吾輩の手の届かぬところにもっていってしまう。手を出すと頭を叩かれるし、何も分けてもらえない。子も吾輩を大切にしてくれているのだが、諦めて主人の横の椅子に行くのである。

 この主人の子と遊ぶことも吾輩の仕事である。

 吾輩が主人の子の足に纏わりつくと、子は棒にゴム紐をつけて垂らした猫じゃらしを持ってきて、吾輩の目の前に持ってくる。この猫じゃらしを上下させたり、横に揺らしたり、床に這わせているので、それに飛びつくのだ。子は魚を釣るように吾輩を釣ろうとする。言うなれば、キャットフィッシングである。大物の吾輩はこれまで釣られたことはないが、危うく釣られそうになったことはある。紐が足に絡まった時である。あまりにも足が痛かったので思わず声を上げたら運良く逃げることができた。子はさぞかし悔しかったのではないかと吾輩は思っている。

 また、じゃれることもよくある。子の手に絡みついてみると、子は私の腹をコソコソ掻いたりして対応してくれる。吾輩はこれが好きで吾輩の方から始めたのであるが、主人はこの様子を見て、『とらちゃんに遊んでもらっているね』と子に言い、吾輩を評価してくれている。子も喜んでいるようなので、これはこれで良いのだろう。

 じゃれる仕事は主人にもする。主人が台所で家事をしている時に、まずは足にまとわりつき、次に足を引っ掻くが、なかなか主人は喜んでくれない。スペシャルサービスとして肩まで一気に駆け上がると、『きゃー』と甲高い声を出して喜んでくれる。このサービスをした後は、主人は十二分に満足したのであろうか、大抵台所から出されるが、吾輩としてはもっと続けたいところである。

 他にも部屋の中の散歩がある。子は猫じゃらしを床に這わせて、部屋の中をウロウロする。猫じゃらしが時々止まるので、その時に捕まえるのだ。子は同じ経路を何周も歩いているが、日頃の運動不足を解消しているつもりなのであろうか。

 先輩猫たちは1歳迄には、飽きてこの仕事を辞めてしまったそうだ。吾輩は1歳を既に迎えたが、この仕事は楽しくて仕方がないので、今のところ辞めるつもりは全くない。楽しく仕事をできていることが長続きの秘訣なのだろう。

 夜には夜で主人が一人で寝ているのが寂しいだろうと思い、主人のベッドに行って一緒に添い寝してあげている。主人がテレビを見ている時にも、そばに寄り添うこともあるし、庭で仕事をしている時にもそばにいてあげて主人を和ませている。先輩猫のごはんちゃんは、主人と顔を合わせれば、『ごはん、ごはん』とご飯をしつこく催促し、ご飯を食べれば何処かに行ってしまう。先輩猫はご飯を食べるだけで他に何もしない怠け者なので、主人からは名前も付けられずにずっと『シロクロ』としか呼ばれておらず、名前らしい名前はなかった。名前がないことを可哀想に思った主人の子が名前を考えたが、『ごはん』以外は喋らないので、『ごはんちゃん』となってしまったのである。但し、名前を付けたものの、今も主人はシロクロとしか言わず、ごはんちゃんに『シロクロちゃん、ごはんだよー』と呼びかけることはない。

 このように吾輩の仕事は沢山あるので何時も睡眠不足で、午前は10時ぐらいから昼まで寝て、昼の食事の仕事を終えた後には、また夕方まで寝て、1日に16時間ぐらいしか寝ていない。主人は寝すぎだというが、吾輩は『ねこ(寝子)』なのだから、人間の基準で言われても困る。また、寝姿がだらしないと言われて笑われることがしばしばある。吾輩としては気持ち良く寝ているだけだが、どこがいけないのだろうか。






 吾輩の自由時間の一番の楽しみはハンティングである。主人と一緒に畑に行って草むらでカエルを捕まえたり、バッタを捕まえたりして遊んでいる。最近はスズメも捕まえられるようにもなって腕前が上がってきた。次の目標は鳩であるが、まだ成功していない。先輩達は皆捕まえることができたので、まだ一人前とは言えない。ハンティングは楽しいが、スズメを捕まえた時には嫌悪の眼差しを感じることがあった。吾輩は娯楽でハンティングをしているので、食べることはない。これがいけないのだろうか?主人からは『ネズミを捕まえるために飼っているんだから』とよく言われるが、ネズミには興味はないし、吾輩の仕事でもない。もう一匹いる先輩猫ごはんちゃんの仕事である。ただ、ごはんちゃんも仕事は嫌いでネズミを捕まえたことはないようで、時々、物置きに置いてある米や芋などがネズミの被害にあっている。

 吾輩は、主人に恵まれ、ご飯も不自由せず、寝たい時に寝て、遊びたい時に遊んでいられるので、親はいなくとも、幸運なのかもしれぬ。この家に暮らすことに幸せを感じている。




2015/8/26